断熱改修をする理由
既存住宅の断熱性能は、最近の新築住宅に比べ、非常に劣っているケースが大半を占めています。
断熱が十分にできていない建物では、暖房室と非暖房室とで室温差が大きくなりやすく、高齢者がヒートショック現象(※)により、入浴時に死亡するという事故も多数発生しています。
当然、建物全体を断熱する方法をとれば、こうした事故を防ぐ効果が期待できます。
しかし、工事費用も断熱する範囲が広いほど高価になってしまいます。
弊社では、必要に応じた範囲(建物の主要な部分など)での断熱改修も含めた検討やご提案をさせていただいています。
※高齢になってくると、どうしても身体機能が低下してしまいます。温度変化が大きい部屋を移動する時などで、急激に室温が下がるような場合に、体からの放熱量を最小限にしようとし、体の末端への圧力が大きく(血圧が上がる)なります。
断熱改修の工事
断熱材には、様々な種類があります。
弊社では、壁に使用する材料としては、グラスウールやロックウール、ポリスチレンフォームやフェノールフォーム等をよく使用しています。
県北などで高い断熱性能が求められる場合には、発泡ウレタンを吹き付ける工法を採用したり、土壁や鉄筋コンクリート造のマンションなどでは、断熱材と石膏ボードが一体となった断熱ボードを使用するなど、地域性やご予算に応じて採用する材料を決定しています。
断熱改修の流れ
- 01現地調査»
- 02断熱計算書作成»
- 03施工範囲、断熱仕様の決定
省エネルギー基準
断熱の効果を図る指標には、住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下、品確法)で定められた省エネルギー対策等級や、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下、省エネ法)で定められた外皮性能の計算などがあります。
省エネ法は、昭和54年の制定以降、下表のように何度か基準の改正が行われており、求められる断熱性能が高くなってきています。
最近では、平成25年に「改正省エネルギー基準」に改正が行われ、省エネルギー対策等級は、平成11年「次世代省エネルギー基準」と同等に設定されました。これは「家の中を10℃以下にしないための断熱性能」を想定して定められたものです。
また2020年から新築する住宅に対しては、この省エネ基準が義務化される見通しとなっています。将来的には、低炭素社会を見据えて、低炭素住宅やゼロエネルギー住宅の導入など、より高気密、高断熱が求められるようになることが予想されています。
表.省エネ法改正の流れ
項目 | 断熱無し | S55年基準 (旧省エネ) | H4年基準 (新省エネ) | H11年基準 (次世代省エネ) | H25年基準 (改正省エネ) |
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省エネルギー対策等級 | - | 等級2 | 等級3 | 等級4 | 等級4 | |
性能基準 | 熱損失係数 | - | 5.2W/(㎡K)以下 | 4.2W/(㎡K)以下 | 2.7W/(㎡K)以下 | - |
外皮平均熱 貫流率 | - | 1.67W/(㎡・K) 以下 | 1.54W/(㎡・K) 以下 | 0.87W/(㎡・K) 以下 | 0.87W/(㎡・K) 以下 |
|
仕様基準 | 断熱材 (外壁) | なし | グラスウール30mm | グラスウール55mm | グラスウール100mm | |
断熱材 (天井) | なし | グラスウール40mm | グラスウール85mm | グラスウール180mm | ||
開口部 (窓) | アルミサッシ+単板 | アルミサッシ+単板 | アルミサッシ+単板 | アルミ二重サッシまたはアルミサッシ+複層ガラス |
断熱計算と仕様
熱計算は、計算書を作成した上で施工範囲や使用する断熱材の仕様を決定していきます。
下表は、サンプル図面のような住宅について、等級2から等級4を想定した計算を行ったものです。
既存 仕様例・・・昭和55年基準=等級2を想定した断熱仕様
部位 | 断熱仕様 | 厚み(mm) |
---|---|---|
屋根・天井 | グラスウール 10K | 50 |
壁 | グラスウール 10K | 50 |
床 | 断熱無し | – |
開口部 | アルミサッシ+単板ガラス | – |
断熱計算・判定
外皮平均熱貫流率 UA | 1.63[W/(㎡・K)] |
断熱性能の判定 | 等級2 |
改装 仕様例1・・・平成4年=等級3を想定した断熱仕様
部位 | 断熱仕様 | 厚み(mm) |
---|---|---|
屋根・天井 | グラスウール 10K | 100 |
壁 | グラスウール 10K | 75 |
床 | ビーズ法ポリスチレンフォーム 保温板3号 | 20 |
開口部 | アルミサッシ+複層ガラス | – |
断熱計算・判定
外皮平均熱貫流率 UA | 1.05[W/(㎡・K)] |
断熱性能の判定 | 等級3 |
改装 仕様例2・・・平成11・25年=等級4を想定した断熱仕様
部位 | 断熱仕様 | 厚み(mm) |
---|---|---|
屋根・天井 | グラスウール 24K | 160 |
壁 | グラスウール 24K | 90 |
床 | フェノールフォーム 保温板1種1号 | 75 |
開口部 | アルミサッシ+複層ガラス | – |
断熱計算・判定
外皮平均熱貫流率 UA | 0.79[W/(㎡・K)] |
断熱性能の判定 | 等級4 |